高速増殖炉2011年04月24日 23時38分40秒

夜
日本にある原子力発電所は大きく分けて軽水炉と高速増殖炉の2種類。放射性物質の漏洩が続いている福島第一原発の原子炉も、冷却に淡水を使う軽水炉と呼ばれるタイプ。国内の原子炉のほとんどが軽水炉で、高速増殖炉は福井県にある「もんじゅ」と茨城県にある「常陽」の2基のみ。

軽水炉に使う核燃料はウラン235。ウラン235に中性子をぶつけると核分裂が起こり、その核分裂で出てきた中性子が次の核分裂を起こさせる。しかし核分裂によって放出された中性子は速度が速すぎてウランの核反応を起こさせ難いため、水を使って速度を落としている。

高速増殖炉に使う核燃料はプルトニウム。プルトニウムを核分裂させたエネルギーで発電すると共に、あらかじめ原子炉内に装填した核燃料として使えないウラン238を核燃料として使えるプルトニウム239に変えることができる。

プルトニウムに中性子をぶつけると核分裂が起こる。プルトニウムの核分裂で発生した中性子は次なるプルトニウムの核分裂を起こし、それ以外の中性子の一部はウラン238に吸収されて核燃料として使用可能なプルトニウム239に変わる。プルトニウムの核分裂には高速な中性子が適していることから、冷却に水は使えない。

軽水炉の場合は水で直接冷却し、発生した蒸気でスチームタービンを回して発電する。高速増殖炉では中性子を減速させないために金属ナトリウムで冷却し、熱交換器で金属ナトリウムの熱を回収してスチームタービンで発電する。

高速増殖炉は核分裂の速度が速く、制御が難しい。軽水炉に比べて制御棒の効きも遅い。もし地震で炉の制御系に機械的なトラブルが生じた場合、軽水炉より核暴走する危険性が高い。ちなみに高速の中性子を利用してプルトニウムを増殖するから「高速増殖炉」と呼ぶのだそうだ。

金属ナトリウムを使用した冷却も非常にリスクが高い。地震でナトリウム配管が破損して流出でもしたら大事故は避けられないし、今回の福島第一原発のように電源喪失でナトリウム系もしくは2次側冷却水系の循環機能が失われたりしたら福島第一原発事故以上の大惨事になることは想像に難しくない。

高速増殖炉も軽水炉も冷却水系にトラブルが生じると大事故になる点は共通だけど、冷却系がより複雑で扱いの難しい金属ナトリウムを使っている高速増殖炉のリスクがより高いのは明らか。米国、フランスをはじめ先進国がその危険性から高速増殖炉の運用から撤退している事実がそれを証明している。

軽水炉はともかく、高速増殖炉の運転は直ちに停止した方がいいと思う。その高速増殖炉もんじゅがいま大変なことになっている事はあまり報道されていない。